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健啖家の淡々とした食日記

孤独のグルメ (扶桑社文庫)
久住 昌之 / / 扶桑社
スコア選択: ★★★




下戸で愛煙家、甘いモノ好きの主人公、井之頭五郎の食日記を淡々と描いた漫画。

冒頭の下りはいつも「腹減った・・・」ではじまり、飛び入りで大衆食堂や甘味処に駆け込む。
闖入する店はどこか懐かしい店から、少し前よりもてはやされている、自然派のカフェのようなものまでさまざま。

美食や珍味などを追及・紹介する、ありきたりな「食いモノ系漫画」とは違い、ごくごくありふれた日常食やジャンク系、コンビニ食などを取り上げ、決して美味しいとはいえない(←失礼)食事を、主人公が大変おいしそうに喰らい、そこに「幸せ」を見出しているところが本書の特徴であろうか?従来の「食いモノ系漫画」とは少々ちがう切り口で「食」を描いているところが面白い、食書(食マンガ?)である。

***

私は「グルメ」という単語が嫌いです。
このフランス語で「大食漢」、「食いしん坊」などの意味を持つ単語は、雑誌などでさんざん使い古されたせいか、陳腐であり、またどこかシッタカブッテいるようなイメージを私に抱かせるんですよね。
なので、いつもであればこの単語を冠した書物はあまり読まないのだけれども・・今回は、表紙の温和そうな男の表情と「孤独」という単語に魅かれてついつい購入。

内容は主人公がなんてことない日常食をひたすら食いまくるというもの。
かなりの大食漢のようで、とにかくものすごい量食ってます。
焼肉腹いっぱい喰って、そのあとにチャプチェを注文し、その間、白飯は2杯食いあげるという、驚異的な健啖っぷりを発揮。しかも終始おいしそうに食べているので、みてて気持ちよいですね。

主人公の訪れる店々について、店や店員の雰囲気、注文までの主人公の葛藤、常連さんや店主とのやり取りなどについて、細かな描写が行われるなど、従来の食いものマンガとは少し違う視座より紹介されています。

また、取り上げている対象がありふれた食事処なので、物語そのものも淡々としています。
「落ち」も妙なタイミングで来るためか?マンガ全体の雰囲気として、つげ義春の「李さん一家」のテンポを思い起こしてしまうのですが・・・それは私だけでしょうか?(笑)

「これは!?」というような、つい引き込まれてしまうような見所はないけど、ついつい読み返してしまう・・そんなマンガでした。
最近の「グルメ」情報や「グルメ」マンガに辟易している人にとっては新鮮で面白いかも・・・?
by love_chicken | 2007-10-08 00:00
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