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飢えた食いしん坊の悲劇・・・ロッパの食日記とコラム

ロッパの悲食記 (ちくま文庫)
古川 緑波 / / 筑摩書房
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今日はウィスキーを一人で飲もう

宿には何の肴もない

一個一円二十銭で買った卵を2つ

めがねたまごにして貰って

それだけで飲む

しみじみと、めがね卵を見た

こんなによく見たことははじめてだ

塩をふりかけて先ず白身を少し食べる

黄身がトロリと溶けた

黄身を食べる うまいな

めがね卵は よきもの

二つの卵はウィスキー三杯の間に

なくなってしまった

皿には黄身が少しついている

皿を手に取るや ペロリと舐めた

そして又 一杯

めがね卵は もういない


  ―悲食記・8月7日より抜粋―

***

エノケンと並び称される喜劇俳優・・・古川ロッパの食日記とコラム集です。

「悲食記」というタイトルから想像されるほど陰々たるモノではなく、苦しいし食事情の中にあっても、たくましくウマイ食事にありつこうとする、前のめりな著者の姿に、「食」に対する執念と、こだわりを感じる・・・興味深い食日記となっています。
実際の「食事」に関しては、「戦時中なのに・・・こんなに食べてたんだぁ」と感心する(?)くだりや、ヤミでスキヤキなどを喰らうエピソードなどあったりして、「戦時中にしてはソコソコ恵まれた食環境に合ったのかなぁ・・・?」というのが率直な感想でした。(終戦1年前にもかかわらず、卵2個とウィスキーで晩酌できるのって・・多分恵まれている方ですよね?)

しかし、上記の詩からも読み取れるように、当のご本人は戦時中の一般人よりも恵まれていた食生活を営んでいたであろうにもかかわらず、非常に辛そうに日記を綴っています。
「飢えた健啖家がいかに悲劇的か・・・?」と、滑稽といってしまえば失礼なのかもしれないけど、そのような・・・どこか可笑し気のある事を思わせる日記だと思います。

コラムは氏の食に対する指向や拘りは当然として・・・驚異的な健啖っぷりが印象的な内容となっています。
まぁ・・・とにかく食べる食べる!!とあるホテルのメニューを朝・昼・晩と毎食ごと全制覇したり、散々呑みあげた後にカツレツを食ったりと・・・今でいうヘヴィメタ(ヘヴィ・メタボリック)一直線的な喰い方をしています。あるコラムに記されていた「我が糖尿病に栄光あれ」という名言(?)には笑っていいのか悪いのか・・・ちと戸惑ってしまいました(笑)
by love_chicken | 2007-09-23 12:00
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